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異文化好き好奇心人間の世界考察ブログ

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夫の獄中体験記

「ワイルドスワン」のJung Changが、また本を書いたんですね~。

共産国かぁ。ま、遠い別世界のことだよね。関係ないよね・・・・
というわけでもないんです!我が家の場合。なんせ親戚の半分近くが、つい最近まで共産国に住んでいましたから。夫の両親は二人とも東ドイツのハレ出身。ベルリンの壁ができる寸前に二人で西へ亡命しました。ですから、親戚は全員、東西ドイツが統一されるまで東ドイツにいました。(それよりずっと昔、アメリカへ移住した人たちもたくさんいるのですが)

分断時代、西から東へ遊びにいくことは可能だったのですが、亡命した罰として、夫の両親は10年間、東に入国することができませんでした。無一文で命からがら逃げてきたので、西へ来てからは相当苦労したようです。10年経って、やっと東にいる親兄弟に会いに行くことが許され、一年に一度、大量のお土産を持参で遊びに行くようになりました。夫の父の実家はかつて牧場経営者で、東ドイツが共産化される以前はちょっとした資産家でした。かろうじて没収を逃れた屋敷の一部の物置には、古い写真や家具など、家族の思い出の品々が眠っていました。東へ帰省を許可されるようになってから、義父はそんな数々の物品を少しづつ、車のトランクに載せて西へ運び出していたのです。

しかし、あるとき大変なことが起こった。私の夫が15歳のときです。夏休みに彼は父親と二人で東の親戚のところに遊びに行きました。久しぶりに従兄弟達と遊んで楽しい休暇を過ごし、さて母の待つ家に帰ろうかというときに、国境で所持品にいちゃもんをつけられてしまったんです。トランクに積んであった物品が「持ち出し不可の骨董品」であると言いがかりをつけられ、義父は警察に連行された。そして、びっくりして立ちすくんでいた夫もアイゼナハという町にある少年院にブチ込まれてしまった。結局、保釈金目当てだったようで、二人とも無事釈放されたのですが、可哀相な夫はまったくわけのわからぬまま、三週間も少年院で過ごす羽目に陥りました。

その少年院には10~15歳までの子どもが全部で30人くらい収容されていましたが(正確には覚えていないそうです)、西ドイツの子どもは夫一人だけ。残りの子ども達の半数は、いわゆる「親が思想犯の子ども達」だったそう。西からやってきた仲間(?)にみんな興味津々で、夫はすっかり人気者に。でも調子に乗って喋っていると、怖~い監守に「余計なこと喋ったらただじゃすまんぞ」って睨まれたんだって。心証が悪くなっては困るので、日課の手作業には精を出しましたが、もし逃げられるものなら逃げたい。散歩の時間にチラチラと塀をチェックしたら、脱走はそう難しくなさそうだということがわかった。しかし、それに気づいた仲間の一人が言うには「逃げてもムダだぞ」。「ここから脱走してもな、小さい監獄から大きい監獄に出るだけさ。東ドイツなんて、そんなものだぜ」その言葉に夫は大きなショックを受けた。

三週間後、ようやく母の元に戻れてほっと安心。西側の基準では夫は勿論「まったくの無罪」です。でも東側のSTASI(国家秘密警察)の記録には残っちゃった。だから、後に軍隊で幹部候補生試験を受けたとき、面接でちょっと騒ぎになったそうです。

東西ドイツが統一してから、東出身作家の文芸作品が広く読まれるようになりました。トーマス・ブルスィヒの「太陽通り - ゾンネンアレー」は日本語訳も出ているので、日本でも知っている人がいるかと思います。この作品は東ベルリンが舞台の青春ドラマで、ユーモアたっぷりに書かれているので(といってもドイツ人のユーモアなので、面白くない!って思う人もいるかも)、「ふ~ん、共産国であっても、若者は若者。青春してるもんだねえ」なんて、微笑ましく感じるかもしれません。でも、実際にはそんな生やさしい状況ではなかったようです。人間って、本当に辛いことは意識の奥へ追いやってしまうもの。この「面白おかしい」物語、登場人物がそれぞれ実在の政治家に相当する、いわゆる「政治風刺作品」なんだそうです。残念ながら私にはそこまで読み取れなかったのですが。ジョージ・オーウェルの「動物農場」のドイツ版とも言えるのでしょうか。

東側に住んでいる夫の親戚。統一後の現在はしょっちゅう行き来があります。会えばとりとめもないお喋りに花が咲く。美味しいケーキの話。バカンスの話。彼らが「共産主義」について西側の人間である私達に語ることはありません。東の者同士では語り合うこともあるのでしょう。でも私達にはなかなか聞き出せない。いつかじっくりと話を聞ける日が来るのかもしれませんが、今はまだ、彼らの心の傷は癒えていないようです。
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  1. 2005/06/01(水) 10:33:08|
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