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異文化好き好奇心人間の世界考察ブログ

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異文化橋渡し人としてのお仕事

ドイツでのアルバイト体験についてあれこれ書いてきましたが、日本でも学生時代にはいろいろアルバイトしていました。私が生まれて初めてアルバイトをしたのは19歳のときです。

仕事内容は翻訳でした。

あれから20年。いまだに翻訳をしたり(しなかったり)してますが、こんなに長い年月が過ぎたのに、翻訳者としてほとんど進歩していないのに自分でも呆れます。

ま、それはおいといて。(懺悔が本記事のテーマではありません)

とにかく、初仕事は翻訳でした。仕事をくださったのは、私が高校時代アメリカへ留学したときにハイスクールやホストファミリーを斡旋した留学機関です。大学を卒業するまでずっとこの機関で仕事をさせてもらったのですが、私の仕事は子どもをアメリカへ送り出す日本の親がアメリカのホストファミリーに宛てて書いた手紙を英文にすることでした。「うちの息子(娘)を一年間、よろしくお願いします」というお手紙です。

個人的な手紙なので、ビジネスレターや機械のマニュアルのように難しくありません。女子大生の私にも完全に理解できる内容です。辞書を引くほどの言葉もでてきません。自ら留学経験があるので、事情はよくわかっていました。

だから簡単!と言いたいところなんですが、そうでもなかったんです。

だって、日本人の保護者が子どもについて書く文章って......

「うちの息子は乱暴で、勉強はちっともせずに遊んでばかりいて困ります。元気で明るいのだけが取り柄でお恥ずかしい。そちらにお世話になりましてもご迷惑をおかけするのではと心配でございますが、よろしくお願いいたします」
とか、
「うちの娘は素直な子ですが、なにぶんウブで甘えん坊で.....」
というようなのがほとんどなんですもん。

最近は日本の親も変わってきたのかもしれませんが、当時はまだ、我が子を卑下して言うのは常識だったようで、「うちの子は愚図で馬鹿で....」式の手紙ばかりでした。それを読んで私は、「う~む。これは困った」と思った。アメリカでは、親が子どものことを話すときには、卑下するどころか長所のみをアピールしている感じでしたから。

初対面の人にいきなり家族の写真を披露し(いつもお財布に入れて持ち歩いてる)、「うちのマイケルはと~ってもいい子なんですよ~」なんてアピールしていました。いや、アメリカ人がみんなそうかどうかは全然わからないのですが、少なくとも私が滞在した田舎町の中産階級の人たちはそうでした。そして、日本からの留学生はたいてい、私が滞在した州やそのお隣の州の田舎町の中産階級の家庭に配置されることになっていました。

ですから、「愚図で馬鹿で」とか「迷惑をかけるがよろしく」というノリで書かれた手紙を受け取ったら、びっくりするに違いないのでした。

そのまんま英文に直訳してしまうと、
「実の親ですらこんなにけなしているのだから、とんでもない子に違いない」
「何故、そんなとんでもない子を私たちのところへ送りつけるのか」
「もしかして、自分たちの手に負えなくなったから、他人に押し付けて厄介払いをしようってんじゃ.....」
と思われるかも。素直に訳したんではトラブルになってしまう。
そう思って、上司に相談したら、
「そこはビアンカちゃんがうまいこと訳しといてよ」
うんにゃー。ムズカしいー。

手紙に書いてないことを英文にするわけにいかないので、内容には忠実に、かつニュアンスはポジティブに。

乱暴 → 元気いっぱい  怠け者 → リラックスした ワガママ → 自分の意見がある 
落ち着きがない → アクティブ  etc.

「迷惑をおかけすることもあると思いますが」は訳しませんでした。「習慣の違いにより慣れないこともあるかもしれないが、良い経験をさせてもらえたら嬉しい」ぐらいにしておきました。

これが私の異文化橋渡し人としての初めての仕事です。

そうやって毎年、何十名もの高校生をアメリカに送り出すお手伝いをしたんですが、現地ではやっぱりトラブルもありました。ホストファミリーと合わないとか学校が合わないなどで現地のカウンセラーを通じて日本事務所に相談があったり、日本の保護者が苦情を言ってきたり。

こんなことがあったんですよ。ある親が、アメリカから送られてきた娘の手紙を読んで仰天。
「こんなとんでもないホストファミリーにこれ以上、娘を預けておくわけにはいきません!!すぐにファミリーを代えてくださいっ!」
怒り心頭で訴えてきました。一体何があったのかと思ったら、

「娘が自分に与えられた部屋の見取り図を手紙に添えて送ってきたんです。そうしたらなんと!娘は北枕で寝かされているじゃありませんかっ。すぐにベッドの向きを変えてもらうように娘に言ったんですが、聞き入れてもらえなかったって言うんですよ。北枕で寝かせるなんて信じられません。このままでは娘の身が心配です。不幸が起きないうちになんとかしてくださいっ!」

え.......北枕って........

そういうのアメリカ人に通じるわけないよー!!

スタッフも困っていました。この手のトラブルを解決するのは私の仕事ではないので傍観していましたが、枕の向きにこだわるこの母親をなだめるの、大変だったみたいですよ。

異文化ってムズカシイ。でも、異文化って面白い。このときそう思いました。

だからいまだにやっているんでしょうか、この仕事。
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  1. 2005/12/06(火) 14:08:12|
  2. 異文化
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

常識の枠

毎回、本当に面白い!と思いつつ記事を拝見しています。
微妙な言い回しの意図を汲んで訳してというは結構大変なのでしょうね。ビアンカさんの変換、うまいです。あーなるほど、と素直に思いました。

それにしても「北枕」というのは困るでしょうね。どういう解決案を出したのかひそかに気になるところです。
  1. 2005/12/06(火) 17:15:03 |
  2. URL |
  3. kmy #GaU3vP2.
  4. [ 編集 ]

翻訳

まさに異文化の橋渡しですね。文字をおって訳せばいいんじゃなくて、ちゃんと何が「普通」なのか考えないといけないというところが難しそうですね。・北枕の根強さというか根深さというか日本での定着度を改めて考えさせられるようなエピソードですね。
  1. 2005/12/08(木) 00:11:06 |
  2. URL |
  3. ヒロシ #-
  4. [ 編集 ]

kmyさん

気に入らなかったのは北枕だけでもなかったようで、結局ファミリーを替わっていました。
  1. 2005/12/08(木) 09:42:47 |
  2. URL |
  3. ビアンカ #JeDKLqWY
  4. [ 編集 ]

ヒロシさん

今は翻訳機械というのがあるので翻訳者は要らなくなると言う人もいますが、文化による価値観の違いを考慮する機械って作れるものでしょうか?本当に作れたらすごいですよね。
  1. 2005/12/08(木) 09:46:05 |
  2. URL |
  3. ビアンカ #JeDKLqWY
  4. [ 編集 ]

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