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異文化好き好奇心人間の世界考察ブログ

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異国でアルバイト 1

私がドイツへ渡ったのは、まだバブル時代のことでした。東京で英語の翻訳をして稼いだお金をせっせと貯金し、自分ではそれなりの蓄えを持ってドイツへ行ったつもりでした。

ところが、それまで円高マルク安だったのが、私が現地に着いた途端、東西ドイツの通貨統合があり、マルクが急騰したのです。お陰で持って行った留学資金の実質価値は激減。焦りました。

幸い、日本からの伝手で、ドイツでも翻訳の仕事が続けられることになり、ほっとしたのもつかの間、日本でバブルがはじけ、時をほぼ同じくしてドイツは東西統一の痛手で不況に突入。日本にいた頃は休む間もないほど次々と仕事が舞い込んできたのに、状況激変です。翻訳だけではとうていやっていけないような事態になってしまったのです。

もー大変!

渡独の目的は「留学」だったので、主たる活動は「学業」なのですが、アルバイトしないことには明日食べるものにも困る~。

そんなわけで、学業の合間を縫って、あっちこっちとバイトに駆けずり回る学生生活となりました。ドイツ語ができなくて大学の授業についていくだけでも精一杯なのに、異国で労働までしなければならないとは。とほほ・・・

でも、お陰で、随分いろんな経験ができましたよ~。今となっては楽しい思い出ばかりです。

お金になることなら何でもやって(体は売ってないです)、生活を繋ぎましたが、ドイツで一番最初に得た翻訳以外の仕事。それは「厨房での手伝い」でした。

大学の夏休みは長いので、学生は休みの間にアルバイトに精を出して一年分の生活費を稼ぐことが多いのですが、留学生も、夏休みに限り、フルタイムで就労することが許可されるため、私も目一杯働こうと思いました。

人材派遣会社に登録し、仕事を斡旋してもらうつもりで出かけて行ったのですが・・・そこでいきなりショックな体験をすることに。というのは、私、事務職希望だったんです。日本ではほとんどデスクワークのアルバイトしかやったことがなかったし、タイピングも日本人にしては得意な方でした。ところが・・・

「事務職希望ね。タイプできますか?」
「はい、できます」
「そう。じゃ、テストするから、このテキストを打ってみて」
渡されたのはドイツ語のテキスト。英語であればスラスラ読めて、ブラインドタッチできたのですが、慣れないドイツ語なので読むのに時間がかかり、しかもキーボードはドイツ語仕様でキー配置が違うんですっ。オロオロ、モタモタ。

とーぜん、失格っ!!

「全然ダメじゃない。あなた事務職は無理よ」
「はい・・・」
「肉体労働ならあるけど、それでいいわね」
「はい・・・」

ある保険会社の社員食堂厨房で働くことになりました。内容は、調理師補助。野菜を切ったり、鍋の中をかき回したりすればいいという。まーいっか。ドイツ語がまだ不十分なんだもん、仕方ないよね、「誰にでもできる仕事」しかもらえなくてもね。傲慢にもそう思って、翌週からその会社にしぶしぶ働きに行ったんです。

仕事着を渡され、作業場に案内されてびっくり!よく知った顔に会ったものですから。大学で一緒にドイツ語講座を受講したモンゴル人留学生がそこにいました。

「あんた、こんなところで何してるの?」彼女は、私を見るなり、そう言った。
「何って・・・バイトだけど、あなたは?」
「私も。でもさ、あんた日本人でしょ」
「それが?」
「なんで日本人がバイトなんかするの」
「はあっ?」

どうやら彼女は、日本人留学生というのは甘やかされた坊ちゃん、嬢ちゃんたちで、日本からたんまり仕送りしてもらって、のうのうと生活しているイヤーな奴らだと思ってたらしいのです。彼女が学校で嫌にツンケンした態度を取るので、不思議に思っていたけど、そういうことだったのか。

えーと、私達日本人留学生は、そうではありません。もちろん人にもよるけど、大抵は苦学生ですよ。日本では親に学費を出してもらう人が多いですが、日本では学費がすごくかかるので、親に大きな経済的負担をかけてしまうんです。だから、その上留学したいと思ったら、自分でなんとか費用を工面するのが普通ですよ。

そう説明したら、「え~、そうなの?知らなかった~」と驚いていました。そして、誤解が解けたら、急に親しくしてくれるようになりました。

とりあえず知っている人が職場にいてよかった。さあ働くぞ!どうせ、「誰にでもできる仕事」じゃん!(と、まだ傲慢バリバリで・・)

と思ったけど、そんなに甘くなかった!

簡単な仕事だとタカをくくっていたら、エライ目に遭いました。いえ、作業そのものは極めて単純なんです。特別な技術は必要としない。調理そのものは調理師がやるので、私はほんのお手伝い。しかし・・・

「ほれ、ちょっとここでスープかき混ぜてて!」と呼ばれ、鍋のところに行き、中のおたまを手に取って、「うげっ!」
大人数分の煮炊きをするため、当然、お鍋のサイズは特大なのですが、おたまもオッソロシク大きく、重い。非力な私には到底片手で動かせるような代物ではないのです。両手で握って、えっちらこ、どっこいしょ。私って一寸法師だったのね・・・って気分。

そうかと思えば、「ほれ、モップと塵取り持ってきて、ここ掃除して!」と大声で怒鳴られるのですが、「モップ」とか「塵取り」とかドイツ語で言われても、なんのことやらわからんのです。大学では「環境汚染」とか「基本的人権」のような語彙を学びましたが、ゼミでモップや塵取りの話はしません。家では掃除もしますが、周囲の人と掃除道具について語り合うわけでもないので、そういう単語、知らなかったんです。

「なにっ。あんた、モップもわからないの?そんなことも知らないで、よく仕事になんか来れるもんだ。ブツブツ・・・」
叱られてしまいました。

おまけに、職場の人達は私のことを、「おいっ。チョン・リー!」「ヘイ、チン・チャン!」とか、そのたびに適当な名前で呼ぶんです。
「私には正式な名前があるので、それで呼んで下さいっ!」と抗議しても、
「いいじゃん。日本人の名前ってどうせ似たようなのばっかりだろ」

そこにいる人達、決して差別的とかそういうんじゃなくて、彼らなりに親しみを篭めて私にニックネームを与えてくれていたようなのですが、どうもなあ~。

その上驚いたことに、朝7時から午後3時までの勤務時間中の半分以上は、調理以外の仕事をしなければなりませんでした。それは・・・掃除です。ドイツ人のきれい好きにはウスウス気づいていましたが、調理場の衛生管理がこれほどまでとは思いもしませんでした。汚れたところをきれいにするなんて、生半可なものではないのです。毎日、毎日、厨房中を隅から隅までピッカピカに磨き上げなければなりません。これもまた、大きくてずっしり重いモップを使って。(ひぃ~っ)

調理しているより、掃除している時間のほうが長いんですよ、本当に。調理台もクレンザーで磨きたて、拭いた後の筋がたった一本残っていることすら許されません。ほんの指紋一つだっていけません。

外で来ていた服は更衣室で脱ぎ、下着の上に白衣を着用。一度来た白衣、一度使った布巾は必ず洗濯に出し、翌日は煮沸滅菌されたリネンを洗濯室から受け取り、使用します。

日本のあるお惣菜屋の厨房では、一日の終わりに布巾をゆすいで干して、翌日それをまた使ったり、オーブンの後ろがゴキブリの巣になっていたり、調理場で着る制服のまま家に帰ってしまう人がいたことを思い出してしまいました。えらい違いです・・・

そんなこんなで、仕事を終えて疲れきって家に帰ると、ソファーに身を投げ出すなり、瞬時に眠りにおちてしまう毎日。楽な仕事だなんて、とんでもなかったです。

「あなたには事務は無理。せいぜい肉体労働ね」どころか、「肉体労働だってろくにできない」ということを身に沁みて感じ、「そんな簡単な仕事」と決めつけていた自分が恥ずかしかったよ。

厨房で働くこと、7週間。腕は筋肉でモリモリになりましたよ。

思い起こせば懐かしいです。
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  1. 2005/09/12(月) 23:39:23|
  2. ドイツ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

そんなことがあったとは。。。

清潔感というのも文化の一部なんだなぁと思わされました。ドイツ人の潔癖具合はなかなかですね。ゲルマン民族って背が高いですよね(偏見?)きっと調理器具なども重心が高くて、力が強い人にできていたんでしょうね。
  1. 2005/09/13(火) 14:10:52 |
  2. URL |
  3. ヒロシ #-
  4. [ 編集 ]

ヒロシさん

そうなんです。ドイツの道具はドイツ人仕様なので、私にはちょっと・・・

うちの夫が日本製のホッチキスを見て、「なんてちゃちなんだ!握ったらすぐに壊れそう」って言うんですよ。握力が違いますから。
  1. 2005/09/13(火) 19:02:48 |
  2. URL |
  3. ビアンカ #JeDKLqWY
  4. [ 編集 ]

わかります

私も前の職場ではお掃除、ぞうきんかけもしていたので、肉体労働でした。夏は暑くて汗たらたら出て大変でした。そうそう、最初、バケツという単語、イタリア語でわからなくて....
今もそんなにいい仕事ではないので、いつか思い出として笑える日がくればいいなあ、と思っているのですが....まだ続きそうです。
  1. 2005/09/14(水) 03:22:49 |
  2. URL |
  3. yuranoto #6DhLHxds
  4. [ 編集 ]

yuranotoさん

どんな仕事もそれぞれ大変。やってみなければわからないなあ、と実感したバイト体験でした。

yuranotoさんの現在のお仕事も、別の意味でいろいろ大変なのでしょうね。お仕事を通して「世の中いろんな人がいるなあ」って感じておられるのではないでしょうか。
  1. 2005/09/14(水) 09:39:51 |
  2. URL |
  3. ビアンカ #JeDKLqWY
  4. [ 編集 ]

ホチキス

ドイツ人には日本のホチキスはあわないんですね。私は日本のホチキスしか使いません。アメリカのは机に置いて上から押すようにしてとじるんですが(他にいい説明のしかたがあるかもしれないですね)、これが芯が大きすぎるし、コントロールが効かないしとても使いにくくていやなんです。日本のは手になじんで、しっくり来ます。
  1. 2005/09/16(金) 11:59:46 |
  2. URL |
  3. ヒロシ #-
  4. [ 編集 ]

ヒロシさん

アメリカのは、穴開け器の要領ですか。

そう考えると、使い勝手の良し悪しはその国の人によって基準が違いそうですね。関連記事をアップしてみることにします。
  1. 2005/09/16(金) 13:42:58 |
  2. URL |
  3. ビアンカ #JeDKLqWY
  4. [ 編集 ]

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